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馬券王の能書き

競馬は記憶のギャンブル


 競馬ファン以外も馬券購入するGⅠレース前後のやり取り。先ずは会社での1コマ。

「Aさん、今週って何か大きいレースあるんですよね?」
「B君よく知ってんじゃん。もしかして買うの?」
「はい。週末新聞見て買ってみます。」
「そうかぁ。頑張れよぉ!」

Aは毎週末馬券購入している競馬ファンで、Bは年に1度か2度しか馬券購入しない、競馬ファンが言うところの一般人。続いて舞台は週末の競馬場へ。Aの友達の競馬ファンCが登場。

「A、お前今日何買うんだよ?」
「あぁ、GⅠかぁ。まだ決めてない。」
「GⅠだと一般人が買うから、オッズが当てにならねぇんだよなぁ。」
「そう言えばウチの会社のBって奴も普段やらねぇんだけど、今回は買うって言ってたよ。」
「まぁ俺達にしてみたら、そんな奴等は美味しいカモだよ。どうせ外れんだから。配当が上がっていいぜ。」

そこに一般人B君登場。

「あ!Aさんお疲れ様でーす。」
「おう、お疲れさん。競馬場まで来るなんて、やる気満々だなぁ。でも混んでてレース見えないかもな。」
「ウチ近所なんですよ。今から馬券買って、レースはウチ帰ってTVで見ます。」
「何だよせっかく競馬場まで来てるのに、馬券だけ買って帰るのか。ところで買い目は決まったのか?」
「はい。新聞買ったら◎がいっぱい付いてる馬いたんで、それから全通り買います!」「そうか。当たるといいな。」
「はい。Aさんも頑張って下さい。失礼します。」

美味しいカモBが去って、AとCとの会話。

「お前の会社の坊やはド素人なんだな。あの馬から17点も買ったら儲からないぞって教えてやれよ。お前も意地悪な奴だよな。」
「まぁなぁ。せいぜい買っても4点までだよな。10頭以上ロバだもんな。」
「勿論お前は馬単で買うんだろ?」
「あぁ。馬連じゃあ2倍、3倍の世界だからな。」

皆さん待ちに待ったGⅠレースは大波乱の決着。ブービー17番人気馬が勝利し、断然1番人気馬は2着、3着にも18番人気馬が入り、単勝・馬連・ワイド・馬単・3連複が万馬券となった。明くる月曜日会社での1コマ。

「Aさん!やりました!昨日のGⅠ獲りました!」
「あ、そうか、B君総流ししてたんだもんな。馬連の配当28950円って事は、3万円くらいになったの?もしかして15万円?」
「いやあの、馬連じゃないです。」
「あぁワイド買ったのか。それでも儲かったでしょ。」
「いやあの馬単っていうの初めて買ったんですよ。1着流しと2着流しっていうので、奮発して1点1000円ずつ。だから85万7200円になりました!」
「えぇ!?本当かよ?凄いなぁ.....。」
「自分でも超ビックリしました!マジ超嬉しいです!」
「そりゃあ嬉しいよなぁ。じゃあ今週末のGⅠも馬単で勝負か?」
「いえいえ。たまたま当たりましたけど、競馬ほんと分かんないんで、払戻したら彼女と旅行行きます。」
「あぁ.....そうなんだぁ。」

その日の帰宅途中AとCは居酒屋で落ち合う。

「お前聞いてくれよ。昨日のウチの会社の奴、馬単85720円を1000円も買ってやがんの。」
「本当かよ!?馬連じゃなくて馬単かよ!?払戻し85万かよ、え?まともに働いてんのやんなって、競馬にハマっちまうんじゃねぇか?」
「それがよ、競馬は分かんないから彼女との旅行資金にするんだとよ。」
「おいおい勝ち逃げかよ?あんな若造のくせしやがって、ずいぶんと堅ぇじゃねぇか。」
「俺なんて結局、10レース終わって資金2000円しか無くなって、しょうがないから一発逆転狙って意味不明な馬連万馬券ばっかり500円ずつ4点だぜ。んでもって、最終だって金無くて買えなかったし.....。」
「そんな事言ったらお前、俺なんて馬単10000円ずつ5点買ってんだよ。冗談じゃねぇよ!それにしても今回の結果は酷ぇよな。お前の会社の奴みてぇに一般人じゃなかったら獲れねぇよ。」
「本当そうだよなぁ。オッズだ何だって色々考えてたらよ、あんな馬券絶対買えねぇよな。」
「そうそう。俺達みてぇに毎週競馬やってる人間はよ、じっくり予想しちゃうからあんな有り得ねぇの獲れねぇよ。」
「でもあぁやって合計34000円買って、82万3200円も儲けた奴が言い触らせばよ、俺も俺もってまた一般人が夢見に買いに来るんだぜ?JRAの思う壺だよな、まったく。」
「でもよA、お前の会社の奴は本当今回たまたま運が良かっただけだよ。俺達みてぇに毎週毎週色んなレース嫌というほど見てりゃあよ、いつか10万馬券を5000円とかガッツリ獲って大勝ち出来る日が必ず来るよ!」
「そうだよな。500万円くれぇ払戻せる日が絶対に来るよな。」

バ~カ、お前ぇ等なんかにゃ一生獲れねぇよ!

 GⅠレースを外す度に、素人だから獲れた馬券だとか言い出す奴が現れる。GⅠレースじゃなくても、タテ目で決まっちゃったよとか、1着3着だよとか、同厩舎2頭出しの人気薄の方が来るなんてあるあるなのによとか、、やっぱり開幕週だから前残っちゃったよとか、デムーロとルメールの組み合わせでこんなに付いたんなら買っときゃよかったよとかとかとか、俺がウインズや競馬場で耳にする言葉を一々挙げてったらキリがねぇが、レース確定後にお前等がよく口にしたり考えたりしてる事だ。

 力断然優位の◎馬からの流し馬券を買ったら○▲で決着、うわ、タテ目で決まっちゃったよ。馬連万馬券を数点購入、うわ、1着3着だよワイドでも高配当だったのによ。同厩舎で2頭出ししてるレースでその厩舎の人気薄の方の馬が波乱を演出、うわ、こっちじゃなくて人気薄のこっちかよ。開催替わりの開幕週、上位人気馬は揃って差し馬、逃げた馬が止まらず行った行ったで万馬券、うわ、開幕週だから前が残っちゃった。デムーロとルメールがいくら連対率の高い騎手とは言えこのレースで乗ってる馬じゃ無理だろう、うわ、ただ騎手だけで見ればこの1点だったのに。これらの言動はなにもお前等みたいな一般馬券購入者に限った事ではない。プロ予想家と名乗っている奴等も、みんな揃って言い訳・負け惜しみ言ってるよ。しかもプロ予想家のタチの悪いところは、レース翌日に勝ち馬の勝因をもっともらしく語り、テメェが印を付けた馬の事には一切触れねぇところだ。終わってからならよ、展開が向いたとか、好騎乗とか、勝因なんぞ誰でも言えるんだよ。大事なのはテメェはレース前に何てほざいてたんだって事だ。一般馬券購入者のお前等にしたって、言い訳・負け惜しみもたまにならいいけどよ、毎週毎週、1レース終わる度に毎回毎回言ってんじゃん。そういう愚痴こぼしも込みで競馬の楽しみと思ってるみたいだけど、格好悪ぃっつうかさぁ、その雑音周りの迷惑なんだよね。

 お前等のタチが悪くて救いようのねぇところは、言い訳・負け惜しみの言い回しからも分かる通り、この決着は決して獲れなかった馬券ではないと思い込んでいるところだ。6点予想して5点に絞ったら、消した6点目で決まったとか、コレとアレで迷ってコレにしたら、アレで決まったとか。この馬が気になるって言い続けてたのに、結局違う馬から買っちゃって結果言い続けてた馬が勝った、そういう場合も然り。俺のやり方は必ずしも間違ってない、間違ってないどころか、ちょっとの違いでほとんどのレース当たってた.....おいおい勘違いも甚だしいぜ。だったら5点に絞らず6点買え。コレかアレかじゃなくてコレもアレも買え。気になるって言い続けてた馬を買え。タテ目を買え。馬連万馬券ならワイドも買え。同厩舎2頭出しなら人気薄を買え。開幕週は逃げ馬を買え。デムーロとルメールの組み合わせを買え。外して言い訳するくれぇなら、テメェ等の蓄積された知識を最大限活用して色々な角度から念入りに予想しろ。テメェ等が蓄積してきた知識は、予想を上手くするものじゃなくて負け惜しみを上手くするものになってるじゃねぇか。

 大体なぁ、お前等は学習能力が欠如してるよ。というより、学習方法が誤っていると言うべきか。馬券購入前にタテ目は買わないと決めたんじゃねぇのか?終わってから嘆くぐれぇなら押さえりゃいいだろ。馬連で購入して1着3着の決着って惜しいのか?競馬予想において、例えハナ差でも惜しいなんて事に何か意味あんのか?たまたま荒れたレースで新聞眺めたら、あぁこの馬は同厩舎2頭出しのうちの1頭か、あ、全然人気無い方が来てんじゃん。そうだよなぁ、もう1頭は1番人気にまで推されてる馬なのに、わざわざ自厩舎の馬をもう1頭出してるって事は、人気薄の方の馬にもチャンスがあるって思って出走させてんだよな、って都合のいい解釈すんだろ。開幕週で逃げ馬が連対するって言ったって、単騎逃げの場合とか、ペースとか、色々な要因があるはず。デムーロとルメールが同レースに騎乗している時、2人の組み合わせで決まる確率は?お前等の学習方法が間違っていると言うのは、データの裏付けがあるかの如き言い草をしておいて、いざどれだけのサンプルを検証しているのかというと、統計学的に全く意味を成さない数しか見ていないからだ。

 お前等がただ何となく、漠然と、こういう法則があると思っていても、きちんと調べたら実は全く逆の数値が出ていたりするんじゃないか。競馬なんて不確かなものだが、お前等が見付けた法則は確かなものなのか。お前等はそういう事をちゃんと調べもしないで、お題目のように毎回毎回唱えていたら、確かに存在する必勝の法則と思い込んでしまうんじゃないか。自分で自分をマインドコントロール。しかも手に負えないのは、お前等の必勝の法則に逆らった買い方をして、必勝の法則通りに決まった時は「やっぱりな!」、お前等の必勝の法則通りの買い方をして、外れた時は必勝の法則に疑念を抱かない点だ。1度作り上げた必勝の法則は、不変の必勝法則にまで成り上がり、当たればさらなる信仰、外れれば見て見ぬふり。そんな中身空っぽの意味無しの法則なんぞ捨てちまえ!

 馬券王矢口にとっての「競馬は記憶のギャンブル」という言葉は、「競馬は過去如何に自分が外れた言い訳、負け惜しみをしたか記憶しておくべきギャンブル」という意味である。唯一不変の必勝の法則を自作し、不的中しても自分は的中する事が出来たかのような錯覚を毎度する奴等に明日は無い。先ず疑え。無意味なお題目に囚われるな。自ら狭めた視野をもう一度広げろ。傾向を求めるのなら、多くのサンプルを用意し多角的に検証しろ。競馬でも日々の生活でも、言い訳・負け惜しみを当たり前とする悪習から脱却しろ。馬券王矢口の予想は一期一会、毎レース納得いくまで的中を追求し、自分に言い訳を許さない予想である。